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2015年 葛布ワークショップ開催(大井川葛布)

2015年 葛布ワークショップのお知らせが届きました。

天極堂でのワークショップではありませんが、
私も学ばせてもらった「葛布」を作り上げる体験教室です。
本当に、日本人ならぜひとも参加していただきたい、
とても考えさせられる体験ができたので、
葛のファンクラブの皆様にもお知らせしたくて
ブログを書きました。

2015葛布ワークショップ

「自然との共生」というのが一つのキーワードだと思います。

葛は、葛粉がおいしいだけの植物ではありません。
葛布という素晴らしいものが作れます。
また、葛布について学ぶと同時に、自然・地球というものを
もう一度考え直す、奥の深いワークショップです。

ぜひぜひ、参加してみてください。

余談になりますが、3年前、このワークショップに参加したとき、
実は私のお腹の中に赤ちゃんがいました。
妊娠に気づく前だったので参加したのですが、、、。
今、その子はすくすく大きくなって、明後日、2歳になるんですよ♪
月日の流れるのは早いなぁーと思いながら
ワークショップのことを思い出していました。

参加された方は、また天極堂にも感想を聞かせてくださいね!

*天極堂はこのワークショップとは無関係です。
 お問い合わせ・お申し込みは
 大井川葛布まで。

大井川葛布
12:09 | 葛布の話 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑

クズから布が出来るんです!!!

吉野本葛の原料となるのは「クズ」という植物の根っこです。
クズの根っこは「葛根(カッコン)」と言い、
漢方薬としても用いられます。

「クズ」はマメ科の植物で、ツルを伸ばしてどこまでも伸びていきます。
そのツルは「つる編細工」として工芸品も作られています。

「クズ」の花は秋の七草としてその美しさを愛でられるとともに
漢方薬「葛花(かっか)」として二日酔いの薬としても処方されます。

根、ツル、花と全ての部分を有効に活用される「クズ」ですが、
さらにさらに、なんと、ツルから「布」を織ることが出来るんです!
「クズ」から作られた布は「葛布」として古くから作られており、
中国では周(しゅう、紀元前1046年頃 - 紀元前256年)の時代には
既に「葛布」が衣服として利用されていたと考えられています。

かつて全国に葛粉の産地があったにもかかわらず、時代の流れとともに激減し、
現在は奈良県と九州でしか作られなくなってしまったように、
葛布もかつては日本全国で作られていました。
しかし、大量生産できる木綿の登場で活躍の場をなくし、
現在は静岡県が唯一の産地となっています。

葛粉と葛布、なんだかとっても似ていますよね。

でも、何千年と続けてきた人としての営みをなくしてしまっていいのでしょうか?
丁寧に丁寧に葛粉を作るのと同じように、
きっと心を込めて葛布を織っているのではないかと思い、
この夏、初めて「葛布作りのワークショップ」に参加してきました!


教えてくれたのは静岡県の「大井川葛布」さんです。
毎年様々なワークショップを開催されていますし、
講演会で全国を回っていらっしゃるので、
興味のある方は是非ホームページをご覧ください。



さて、いよいよ「葛布」作りの開始です。
ワークショップ初日は炎天下の下でのススキ刈りから始まります。

ススキ刈り

刈ったススキを車に山盛り積んだら、小休憩の後、いよいよクズのツルの採取です。

葛つる採りの道具

使う道具は麻ひもとハサミ。
河原に生えているクズを採るのですが、条件があります。

・枝分かれせずまっすぐ伸びているもの。
・節から根が出ていないもの。
・虫食いやこすれた傷がないもの。
・切ったとき、中心の白い綿の部分が細いもの。
・元気よく芽が上向きに伸びようとしているもの、、、。

葛の採取風景

説明を受けた後、実際にクズを採るのですが、
無数に生えているクズなのに、
全ての条件を満たすクズのなんと少ないこと!

でも、どんなクズを選ぶのかが、最終の出来上がりを決めるので
ここでのクズ選びは重要なポイントになります。
壁紙や台拭きなら多少気にしなくてもいいかもしれませんが、
ストールや着物を作るのであれば、選び抜いたツルが必要でしょう。
何事も「目的」が大切。
何を作る為にクズを採るのかを考え、最終の出来上がりを思い描きながら採取します。

そして、採取した後の河原では必ず「ありがとうございました」と手を合わせます。

この自然がなければ私たちは葛布を作ることが出来ません。
そこで、自然に感謝し、手を合わせるのです。
自然のものを、使う分だけいただく。

今は大量生産大量消費が当たり前で、
工場や機械、量販店に手を合わせて買い物する人はいないでしょう。
でも、必要なものを必要な分だけいただき、心を込めて作る。
いただいたときも作ったときも、買っていただいたときも
「ありがとう」と手を合わせる。

感謝の気持ちを持って生活することの大切さを学びました。

さて、
苦労して探し出したクズのツルは、両手を伸ばしたくらいの長さで切り、
リースのようにくるくるっと軽く丸めて麻ひもで結びます。

採取した葛のつる

すぐに茹でないとどんどんクズが元気をなくしてしまいます。
昔は採ってすぐに河原で茹でていたのですが、
最近は河原で火を使うことが出来ないため、工場に持ち帰ります。
元気にするためしばらく水につけてあげた後、
釜で柔らかくなるまでゆで上げます。

釜で茹でる

ゆで過ぎると繊維がぼろぼろになって使い物になりませんが、
ゆでたりないと発酵がうまくいかず、繊維を取り出すことが難しくなります。
パスタの「アルデンテ」ではないですけど、茹で加減は大変重要です。

室作り4

ゆでたつるは、先に刈っておいたススキを敷いた上にのせ、
さらに上からススキをかけてつるを包み込むようにして室(むろ)を作ります。

ススキに含まれる「枯草菌」がつるを発酵させ、
表皮を溶かして繊維を取り出しやすくするのです。
ここでもゆで時間と同じくタイミングが重要となります。
だいたい2~3日でできるのですが、
においと柔らかさを確かめないと、日々の温度によって発酵の速度は左右されます。

発酵しすぎれば繊維がぐずぐずに、足りなければ洗いの作業が大変になります。

室作り2

丁度良く発酵したクズのつるは、表面に白く菌糸がついており、
表面がぬるぬるしていて、少し力を入れると表皮がずるっとむけてしまいます。

また、発酵のタイミングはこちらで変えることが出来ないので、
ちょうど出来上がった日が台風や大雨で増水していれば
洗いの作業をすることが出来ず、せっかくのつるは全てダメになってしまいます。

全てが自然に左右されるのです。

そしていよいよ洗いの作業。
この作業は川で行います。
清流が葛の繊維を白く美しくつややかにしてくれるからです。
溜め水や水道水ではうまくいきません。
つやがなくなってしまったり、黄ばみが取れなかったり。
やはりどんな水も自然の水にはかないません。

つるを洗う

川にロープを張り、流れを利用しながら表面の皮をむき、
繊維にこびりついたものも指で軽くこすりながら丁寧に1本づつ洗っていきます。
私たちは半日川に使ってこの作業をしていたのですが、
半日も川に使っていれば体は冷えてきます。
中腰での作業も大変で、作業終了後に河原へ上がるとどっと疲れが出て来ます。
まる1日この作業をしているのは不可能でしょう。

洗い

さて、気づきましたか?

クズのツルを採取するのは慣れれば簡単です。
ゆでるのも釜さえあればできますし、
発酵もタイミングこそ重要ですが、発酵している間はすることはありません。
じゃあ、たくさんクズのツルを採ってくればいくらでも葛布が作れるじゃないか。
しかも原料はタダなんだから、、、。

違うんですよ。
発酵させるためには発酵させる分だけススキが必要です。
たくさんのツルを発酵させようと思えば、必死になってススキを刈り続けないといけません。
また、発酵したクズのツルは途中で待ってはくれません。
その日が来ればすべて川での洗い作業を終えなければ、
使い物にならない分(洗えなかったもの)は全てただのゴミになるんです。

そう、
「必要な分」というのがやはりキーワードです。
この後の作業もすべて手作業で、時間と体力、気力の勝負です。
しかも、たった1回作業したくらいでは伝統は受け継ぐことはできません。
ずっと、何日も、何年も続けているから伝統なのです。
伝統を守るためには、続けるということが大切です。
そう考えれば、無理をして体や腰を痛めるような作業はせず、
自分たちの必要な分を必要なだけとり、無理のない範囲で作業するということが
どれほど重要なことかが見えてきます。

そして、そうすることで乱獲は起こりませんし、
川の水もいつもきれいなままなんです。

必要な分をありがたく頂戴する。
ここでも大切なことを学びました。

さて、洗い終わったクズのツルは「葛苧(くずお)」と呼び、干して乾かします。
ここまでくれば、この後の作業はいつ行っても大丈夫。

クズのツルは元気な夏のうちに採取して全ての工程を行い、
1年分の葛苧を夏に作っておきます。
そして、秋、冬、春と糸にして布に織り、製品を作る作業を行います。

ここまで来たらもう終わり。っと思いませんか?

まだまだなんですよ。
「糸」を作るって、どれほど大変な作業か、
どれほど時間をかけて行うものかをご存知ですか?
普段の生活で「糸」を意識したことってありますか?

糸1本作る。それも、それなりの長さのものをと考えると
気のめいるような作業が待ち受けています。

裂いた糸

私が作った一束の葛苧を糸にちょうど良い太さに裂くのに、
2日もかかりました。
(ワークショップはやや睡眠不足を伴います。)

裁縫をしたこともなく、服やかばんは買って当たり前と言う人がほとんどでしょう。
だってユニクロもイオンも安くていいもの、いっぱい売ってますものね。

でも、そんな安い衣類だって1本の糸からできているんです。

裁縫は好きと言う人や、染め物に興味のある人もいるでしょう。
でも、そのうちの何人の人が「糸」を作ったことがあるのでしょうか。
綿でも絹でもかまいません。
自分で作った「糸」で服を作った方はいらっしゃいますか?

「糸」なんてどこにでも安く売ってるし、小学校の被服室には
ある程度の長さのある糸もすぐに捨てられていることでしょう。

でも、私は糸を、ほんのわずかな糸を作るのに大変苦労をしました。

葛布結び1

両手を広げた長さのツルを採取しましたが、裂くときに短く切れてしまうことが多いです。
短く切れてしまったものでも、ある程度の長さがあれば使います。
そう、細く裂いた繊維を1本づつ手で結んでいくのです。

つぐり作り3

時間をかけて作った糸は「つぐり」という状態に巻きます。

つぐり

いよいよ「鶴の恩返し」のような機織り機の登場です。
葛布を織るものは葛布用の使用になっています。
シャトルももちろん葛布用。
葛布は撚りをかけず、平糸で織るのが特徴で、
平糸で織るからこそ葛布独特の光沢が出ます。
だから、バンバンっと力いっぱい織るというよりは
すくうように優しく織ります。

高機

葛布のアップ画像です。
シルクのようなつやがあり、きらっと光ります

葛布アップ

葛布はその美しさゆえに平安貴族の装束にも用いられていました。
また、薬効を期待してか、武士の袴下にも用いられていました。
乾きが早く、軽くて動きやすいので、水袴にも用いられました。
武士好みの直線を出せるので、江戸時代にはとても重宝されました。

でも、上記工程を見て来て感じていただけたかとは思いますが、
葛布を作るということはとても大変な作業です。
自然布と呼ばれるものは全てこのような工程を経ており、
芭蕉布などももちろん同じです。
一つの着物を織るのに3代かかる、というのもうなずけます。
着物を代々受け継ぎ、大切に着てきたというのもわかりました。
たって、1着作るのにどれほどの手間がかかっていることか!

しかし、紡績の機械が誕生し、遺伝子組み換えで綿の生産が拡大し、
糸を作るということがとても簡単なことになりました。
糸を作る、布を織る、衣服に仕立てるという全ての作業が
家での作業から工場での作業にかわり、
家の中から糸を作るという作業が消えてなくなりました。

生活が向上したのは良いことでしょう。
でも、自分たちが身にまとっているものがどのようにして作られたのか、
もう少し関心を持っていいのかなと思いました。

昨今、「食育」がもてはやされ、
ようやく食材や産地へ興味を持つ人たちが増えてきました。
今後は「服育」という言葉が生まれ、
自分たちの衣服に興味を持ってもらいたいと村井さんは言います。

私自身も裁縫は苦手ですし、今まで糸や布には興味もなかったのですが、
知ってしまうとなかったことにはできません。
このブログを読んですこしでも葛布、古代布、自然布に興味を持たれた方は
是非大井川葛布のHPも見てくださいね。


一部ではありますが、葛布の商品をご覧ください。

この方が村井さん。手に持っている扇子は葛布です。

葛布の扇子

大井川葛布で販売しているかばん。いろんな色やデザインがあります。

葛布のカバン

これは村井さんの自宅ののれん。
葛布ののれんは軽いので、少しの風でもふわっと揺れ、暑い夏の涼に最適です。

葛布ののれん

余談ですが、おかみさんも素敵なブログを書かれています。
よろしければこちらもどうぞ。
17:21 | 葛布の話 | comments (1) | trackbacks (0) | edit | page top↑